『急性痛』と『慢性痛』


痛みには『急性痛』と『慢性痛』という分類がありますが、何を基準に急性と慢性を分けているのでしょうか?

発症の期間で分けることも出来ますし、脳の活動部位で分けることも出来ます。 

また新しい違ったミカタとしては、急性痛は『弾性』で、慢性痛は『可塑性』とも言えるのではないでしょうか?

 炎症の伴わない動作痛などは、侵害刺激が加わっても、活動電位は頻発せず、すぐに静止状態に戻ろうとします。

別の言い方をすれば、刺激が加わっても、形が記憶されず、すぐに元の状態に戻ります。

ボールが凹んでもすぐに戻るように(弾性)。

この場合は侵害刺激をなくせばいいわけですから比較的早期の改善が期待出来ます。
(ただし、痛みの3つの側面と侵害受容性疼痛だけでなく、神経性、非器質的疼痛、中枢機能障害性疼痛のグラデーションのなかでみる必要があります) 

 では慢性痛はどうでしょうか?  

慢性痛は繰り返しの侵害刺激によって、シナプス間での伝達効率が高まり、活動電位が発生しやすい状態です。

それが続くことで粘土のように形が変わり、ボールとは違いすぐには元の状態には戻らなくなります。(可塑性)

いわゆる『痛みを記憶した』状態となります。

これを痛みの神経生理学で言えば、『感作』が起きている状態です。

そんな状態の場合は、侵害刺激をなくすことも大切ですが(もともと末梢からの侵害刺激の入力がない場合もありますが)、治療のポイントは、新たにシナプスの可塑性を利用することです。

ターゲットは繰り返しの侵害刺激によって生じた『記憶』です。なので慢性痛に対する治療とは『学習』となります。

よって繰り返しの刺激が必要となるのです。 

繰り返しの刺激だけでなく、インパクトある一撃もまた『記憶』されますね。

出来る事ならば、『いい記憶』だけして頂きたいです。

痛みのミカタ

ジャンルを超えて痛みの本質を追求する 「痛みの哲学セミナー」